「虹色Passions!」の歌詞についての一人語り

 10/21に虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメOPが発売されました。アニメ2話で初めて聴いた時からとても好きな楽曲だったのですが、歌詞を見てみるとますますこの曲の良さが感じられたのでそれをこれから述べていこうと思います。(『』内の言葉は歌詞カードより抜粋しております。)

 初めてこの曲を聴いた時に「あぁ、侑ちゃんの曲だな」と感じました。『予感のなか踏みだすよ最初の一歩』であったり、『溢れだすこの気持ち 胸の奥もう止まらない』であったりは正に1話の侑ちゃんそのもので、歌っているのは同好会のメンバーであっても、これは侑ちゃんの想いを詰め込んだ歌詞です。
 では2番も侑ちゃんが主体となっている歌詞なのか、というと少し違う気がします。Aメロの『ココロの重ね着はさぁ脱ぎ捨てちゃおうよ』や、Bメロの『もしも不安になったなら思い出して欲しいよココにいる』という歌詞は侑ちゃんから同好会のメンバーに宛てたメッセージのように感じます。そして、サビは『輝くよいつまでも』と始まります。これは、侑ちゃんのメッセージに対してメンバーが応えている、ということではないでしょうか。つまり、2番のサビ部分では同好会のメンバーの想いが描かれているということです。

 このように思う根拠としては、1番では『ミライ』『キセキ』と書かれているのに対して2番では『未来』『奇跡』と書かれていること、1番では『シンパシー』だが2番では『エンパシー』になっている、の二点が挙げられます。

 一点目の表記の違いについて。侑ちゃん自身は「未来がどうなるか」について非常に漠然としています。「スクールアイドルを応援できたら、自分も何か変わるかもしれない」程度です。また、『キセキ咲いてくよ』とあるように、彼女にとって奇跡はこれから起こるもので、どんなことを奇跡と呼ぶのかまだまだわからないように感じます(せつ菜ちゃんのライブを見たことは奇跡と呼べるかもしれませんが、それを彼女が「奇跡」と感じているかは現状わかりません)。つまり、侑ちゃんにとって『ミライ』も『キセキ』もどんなものかわからない、だからこそカタカナで表記されているのだと思いました。
 対して、同好会のメンバーはそれぞれスクールアイドルを通して何をしたいのかを明確にもっています。それは言い換えると「未来を見据えている」ということだと思います。そして、彼女たちは『奇跡信じてる』と歌います。どんなことが起こるのかはわからないという点では侑ちゃんと同じですが、少なくとも、彼女たちは「侑ちゃんと出会う」という奇跡を一度体験しているので、「奇跡は起こる、起こせるものだ」と信じているのではないでしょうか。ですので、同好会のメンバーは『未来』『奇跡』とはっきり言うことができるのだと思います。

 二点目の『シンパシー』と『エンパシー』について。どちらの言葉も「共感」という意味をもちますが、シンパシーには同情の意が含まれており、ネガティブな場で使うことが多いそうです。しかし、この曲にネガティブな印象はありません。そこで、私はシンパシーを「寄り添う」という意味で解釈しました。同好会のメンバーひとりひとりに寄り添い、共に道を進んでいくということであれば、後の『そうきっとひとりじゃないよ いつもみんないるから 夢と夢繋いでいこう』にも繋がってくると思います。
 ではエンパシーはどうなるのかといえば、これは「他者の価値観を知ること」だと思います。同好会はそれぞれが、それぞれのスクールアイドル像をもって活動をしています。以前の同好会ではそのスクールアイドル像がぶつかり合って一度はバラバラになってしまいましたが、侑ちゃんとの関わりを経て、それぞれの価値観を尊重しながら活動するようになりました。だからこそ、他者の価値観に合うように自分を変えるのではなく、自分は自分らしくいる、という虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の主題に沿うためには『エンパシー』を重視するのでしょう。

 そして、ラストのサビは1番と音自体は同じものの、『ミライ』『キセキ』が『未来』『奇跡』になり、『虹色Passions!!』と「!」が一つ増えています。ここで、侑ちゃんと同好会の9人を合わせた「10人」の想いが合わさった歌になり、『夢と夢 叶えていこう』と侑ちゃんの夢と同好会メンバーの夢を叶えていこう、と歌い切ります。

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会はソロ活動を主とするグループです。しかし、この曲では先述した『シンパシー』や『ひとりじゃないよ』といった、「仲間と一緒にいる表現」が多く見られます。時に仲間のパフォーマンスから学び、時に仲間に自分のパフォーマンスを教える、そんな切磋琢磨する関係性にあるからこそ、ソロ活動であっても同好会の存在は不可欠であり、自分を表現することのできるかけがえのない居場所となっています。それぞれが思い描くものは違っていても、『また会おう ここで』と言えるのが、この同好会の素敵なところだと思います。

 総じて、様々な人物の想いが込められ、とても虹ヶ咲らしい楽曲だと思います。アニメはまだまだこれからですが、きっとこの歌詞にあるように『虹のMelodies』を響かせてくれるのだろうと期待しています。