アニメ虹ヶ咲の感想文 4話 -宮下愛ちゃんの想い-

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメ4話を視聴しました。今回は宮下愛ちゃんにスポットが当たった回で、「ソロ活動」という虹ヶ咲の根幹に関わる話もされています。また、いよいよ同好会の活動が本格的になり、メンバーそれぞれの行動や関わりが部活動を通して描かれることが増えてきました。そのため、今回はこれまでと比べて侑ちゃんの出番が少なかったかと思います。

 今回の話は、前回のせつ菜ちゃんが屋上で行ったライブを観た愛ちゃんと璃奈ちゃんがスクールアイドル同好会に入部するところから始まります。その後すぐに、今後の同好会の活動についての話し合いに参加をするのですが、周囲がそれぞれのスクールアイドル像に基づいた意見を出す中で、「とにかく楽しいのがいいかな」という意見を出します。これはスクールアイドルについての知識を持たない愛ちゃんだからこそ出てきた意見であり、最も大事なことでありながら忘れがちな「楽しむ」ということを再確認できた場面だったと思います。
 その後、かすみちゃんによって開催された講義「スクールアイドル害論」改め「スクールアイドル概論」では、「スクールアイドルに必要なこととは何か?」という問いに対して「わからない」と愛ちゃんは答えます。かすみちゃん曰くこの問いに明確な答えはなく、ファンが喜んでくれることならなんでも正解になるそうで、それを愛ちゃんは「奥が深い」と感じます。(余談ですが、ここのメガネかすみんや「合格!」と言うかすみんめっちゃ可愛いですよね。)

 愛ちゃんは入部してすぐに、個性あふれる同好会の良さを感じ、このメンバーで行うライブに期待を高めます。ここでの愛ちゃんはライブとはグループ全員でやるものだと考えていましたが、それぞれの個性を生かすためにソロ活動を行おうとする同好会ではひとりでステージに立たなければいけません。答えが限られる学校のテストや、決められたルールが存在するスポーツと違い、スクールアイドルにはそれぞれの答えがあり、それぞれの正解があります。先ほど「奥が深い」と感じていたスクールアイドルの多様性に、自分だけのスクールアイドル像を見つけられていない愛ちゃんは不安を感じます。
 これまで愛ちゃんが助っ人をしてきたスポーツは全てチームで行うものだったようですが、そういったスポーツは個人の動きもさることながら、それ以上にチームとしての動きが重要視されます。チームでの動きは必然的に統一感が求められ、個人での自由な動きは控えなければなりません。しかし、スクールアイドル同好会では、むしろ個人の動きが重要になり、他のメンバーはその中で自分だけのパフォーマンスを行おうとしています。だからこそ、自分だけのパフォーマンス=自分だけの正解を見つけられていない愛ちゃんは悩んでしまうのでしょう。

 そんな愛ちゃんは、土曜日のランニングで集合時間より一時間早く、集合場所のレインボー公園に着きます。ランニング中の言葉こそありませんが、きっと彼女の中にはスクールアイドル活動についての不安や悩みが渦巻いていたのだと思います。早めの時間から走り始めたのも、漠然とした焦りによるものだったのかもしれません。
 しかし、橋の上でエマちゃんと会ったことで転機が訪れます。「いろいろあって、ようやくスタートラインに立ったばかり」で「不安で、でも本当はそれと同じくらいこれからに期待している」、エマちゃんは他の部員たちも不安を感じていると言います。そうして悩んでいる他のメンバーと愛ちゃんに違いはなく、裏を返せば愛ちゃんも「これからに期待している」のでしょう。そして、愛ちゃんが来てからは同好会の笑顔が増え、それを無自覚にできているからすごい、というエマちゃんの言葉を聞いて、愛ちゃんは自分だけの正解のヒントを見つけます。
 「周囲を笑顔にできる」、しかもそれを自然と行えるのは愛ちゃんの立派な個性であり、楽しいことが大好きな彼女にとってそれはとても素敵なことです。だから、愛ちゃんは「楽しいをみんなと分かち合えるスクールアイドル」を目指します。そうして橋から公園へと駆け出す彼女の姿は、これからの「未知なるミチ」への期待を胸に、楽しさいっぱいの表情でした。

 公園で披露された愛ちゃんのソロ曲「サイコーハート」は、チア風の衣装を着た愛ちゃんが明るい歌とダンスで、自分もファンも笑顔にする楽しさいっぱいの曲でした。ダジャレを交えた歌詞は、とても愛ちゃんらしいもので、愛ちゃんだけにしかできないステージがそこにあったと感じました。公園という、老若男女問わず様々な人々が集まる場所でパフォーマンスをするのも愛ちゃんならではだと思います。
 パフォーマンス後は、見てくれた人たちの笑顔や拍手を受けて「ひとりじゃない!」と実感します。これは愛ちゃんだけでなく同好会全員にとっても重要な点で、彼女たちは確かにステージではひとりですが、応援してくれるファンや、共に活動する同好会の仲間たちがいつも側にいてくれる、決して独りでステージに立つわけではない。このことは、ソロ活動を主とする虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の要となる考えだと思います。

 ちなみにこれは明確な根拠のない話になりますが、愛ちゃんは人一倍、独りになることへの不安が強い子だと思います。誰とでも友達になれて、常に人の輪の中にいる、そんな愛ちゃんだからこそ、ひとりでステージに上がらなければならないソロ活動に不安を感じていたかもしれません。
 また、途中で出てきたテストの点数やソロ活動への葛藤を見てわかる通り、愛ちゃんは頭が良く、物事を深く考えることのできる人物でもあります。無鉄砲に前へ突き進むわけではなく、ステージ上で失敗したり、自分だけのパフォーマンスではファンを満足させられないのではないかという考えも頭の中にあり、そんなときに仲間が周りにいないことを想像すると、先述したソロ活動の不安に拍車をかけているのかもしれません。
 と言っても、これらは全て「友だちを大事にする」という愛ちゃんの美点に繋がるものであり、様々な状況を加味した上で前向きな考えができるのは愛ちゃんの大きな魅力だと思っています。

 明るい人柄で周囲の人々を笑顔にできる闊達な愛ちゃんと、問題に対して心配や不安を抱えて葛藤する愛ちゃんというふたつの愛ちゃんが見事に表現されていて、ただ前向きなだけのキャラではないことがわかるとてもいい回だったと思います。次回はエマちゃん回のようですが、正直メンバーの中で最も読めない回だと思っているので、来週を楽しみに待っていたいと思います。