アニメ虹ヶ咲の感想文 5話 -エマ・ヴェルデちゃんと朝香果林ちゃんの想い-

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメ5話を視聴しました。エマちゃん回ということで留学の話を絡めてくるのかなと思っていましたが、エマちゃんと果林ちゃんの関係を描いた回になりました。そのため、今回は果林ちゃんのことも含めてアニメの内容に触れていこうと思います。

 冒頭で、エマちゃんが虹ヶ咲学園で初めて出会った生徒が果林ちゃんだということがわかりました。アニメ内ではスクスタよりも絡みの多かったふたりですが、この出会い方はかなり意外でした。エマちゃんのことをずっと「親友」と言っている果林ちゃんですが、エマちゃんと果林ちゃんの交流はその後の学食で同席する場面から始まりました。騒がしいのが嫌いだと言っている果林ちゃんが、エマちゃんの同席を許しているところをみると、果林ちゃんにとってもエマちゃんの存在は少し特別だったのか、ひとりくらいは平気だろうという気まぐれだったのか、それはわかりません。紆余曲折を経て、現在ではエマちゃんと果林ちゃんは親友となっているわけですが、お互いがお互いにとってかけがえのない存在となっているのは間違いないと思います。
 エマちゃんといえば優しく温かな性格が特徴の子です。たくさんの兄弟姉妹を抱えるお姉ちゃんだということもあり、同好会のなかでも特に面倒見のいい子でもあります。それは彼女の目指す「心をぽかぽかさせてくれる」スクールアイドルにもよく現れていて、他のメンバーからもエマちゃんらしいと言われていました。
 しかし、エマちゃんが同好会で活動する時間が増えるにつれて、果林ちゃんはエマちゃんから距離を置くようになってきます。最初は果林ちゃんの考えていることが分からなかったエマちゃんでしたが、雑誌に挟まっていたアンケートに書かれていた果林ちゃんの本心を見て、果林ちゃんを街に連れ出します。この時のエマちゃんには強引さがあり、先述した性格とは異なるものなのですが、スクールアイドルになるために単身で日本に来ているところから、自分がやると決めたことはやるという意思の強さももっているのでしょう。果林ちゃんを連れ出したエマちゃんはお台場のいろんな所を周りました。それは果林ちゃんがアンケートの「休みにやってみたいことは?」に書いていた「友だちと思い切り遊ぶ」ことを叶えるためです。
 最後に、ふたりはお台場の「日本科学未来館」にある地球儀の前で向かい合います。アンケートを渡し、果林ちゃんの心を温めてあげられなかったことを悔い、果林ちゃんのことをもっと知りたいと言うエマちゃん。それに対して果林ちゃんは、同好会のメンバーと関わるのが楽しかった、でも、それは自分のキャラじゃない、クールでカッコつけて大人ぶっているのが朝香果林なのだと言います。そんな果林ちゃんに対して「どんな果林ちゃんでも、笑顔でいられればそれが一番だよ」と、後ろからハグをしながらエマちゃんは語りかけます。この後、エマちゃんのライブシーンになるのですが、振り返った果林ちゃんの顔に光が当たっているのがとても印象的でした。
 そこで披露されたのが「La Bella Patria」直訳すると「美しい故郷」という曲です。果林ちゃんが選んでくれた衣装を身にまとい、会場をエマちゃんの故郷であるスイスのような豊かな草原や花で彩ったステージとなっており、ライブ中に挟まれる映像は誰かと一緒に遊んでいるような構図になっています。科学という、理屈を象徴するようなものを扱う場所で、それを包み込むように緑が広がっている様子は、今の果林ちゃんとエマちゃんを表しているように感じました。

 この後、エマちゃんと果林ちゃんは仲直りをし、果林ちゃんが同好会に加入したところで今回の話は終わりなのですが、なぜ人と距離を置いていた果林ちゃんがエマちゃんと親友になったのでしょうか。果林ちゃん自身、元々賑やかなことが苦手だったのかもしれませんが、それ以上に先述した「朝香果林というキャラ」に縛られていたのが、人付き合いを避けていた大きな理由なのでしょう。「クールでカッコつけて大人ぶっている朝香果林」なら、人と馴れ合ったり、笑い合うことはしないと自分で自分のイメージを凝り固めていて、本当は誰かと遊びたいと思っていても、そのイメージを壊すことができなかったのです。それだけに、自分のことを全く知らない留学生のエマちゃんは、そういったイメージをもたずに接することのできる人物だったのでしょう。「朝香果林というキャラ」に対してではなく「朝香果林」というひとりの女の子として関わってくれたのは、少なくとも虹ヶ咲学園ではエマちゃんが初めてだったのだと思います。散らかっている部屋、という「朝香果林というキャラ」にそぐわないものをエマちゃんには自然と見せているところからも、果林ちゃんにとってエマちゃんが「朝香果林」を見せられる数少ない人物なのだということがわかります。
 また、「どんな果林ちゃんでも笑顔でいられればそれが一番だよ」と言った場面では、「朝香果林というキャラ」と「朝香果林」、どちらも果林ちゃんにとっては大事であることをエマちゃんは理解していて、イメージに縛られるのではなくただ笑顔でいてくれればいい、と果林ちゃんをそのまま受け入れてくれるような安心感があり、そんなエマちゃんだからこそ果林ちゃんの素直な笑顔を引き出せているのだと感じました。

 今回は優しいながらも我の強いところを見せたエマちゃんと、完璧なように見えて不器用なところを見せた果林ちゃんというふたりにスポットが当てられ、途中すれちがいはありましたが、最後はお互いの素直な想いをぶつけ合うことで仲直りができました。王道な展開ではありますが、こういう回はいつも前半で心にダメージを負って、後半でもなかなか傷が癒えないので個人的にはちょっと苦手です。とはいえ、とてもいい回だったのは間違いなかったので、次回の璃奈ちゃん回を楽しみにしながら、また一週間を過ごそうと思います。