アニメ虹ヶ咲の感想文 6話 -天王寺璃奈ちゃんの想い-

 「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」のアニメ6話を視聴しました。璃奈ちゃん回ということでしたが、これまでキャラの設定はスクスタに沿っていたことが多かったところを、今回は大きく変えてきていました。

 さて、その設定の変更点ですが、大きく二点で挙げると「感情を表すのが苦手な理由」と「璃奈ちゃんボード製作の経緯」です。
 前者についてですが、スクスタの方では「両親がふたりとも家を空けることが多く、両親を心配させないために自分一人でも大丈夫だというところを見せようと振る舞っていたら、次第に感情を表に出せなくなっていった」というものでした。しかし、アニメの方では「小さい頃から表情を出すのが苦手だった」と変更されています。この変更に関しては、スクスタの方の理由をそのまま採用すると話が重く長くなってしまう上に、「私は変われる」という本筋から脱線してしまうように感じるので、時間が限られているアニメでは致し方ないのかなと思います。
 後者については、先述した時間の問題もあるかもしれませんが、スクスタでは「紙のボード→ライブのボード」だったのに対して、アニメは「ライブのボード→紙のボード」の順番だったことが大きいと思います。愛ちゃん考案で璃奈ちゃんボードが作られたのがスクスタでしたが、アニメ中の様子を見る限りは璃奈ちゃんが自分で璃奈ちゃんボードのアイデアを考えて実行したようです。とはいえ、この璃奈ちゃんの行動は「できないことはできることでカバーすればいい」という愛ちゃんの言葉を体現するような形となっているので、璃奈ちゃんボードに愛ちゃんが深く関わっているのはスクスタの流れも踏襲されていて好印象でした。余談ですが、スクスタでは虹ヶ咲学園の生徒の力を借りながらライブのボードを製作していましたが、アニメではボード製作の詳細な家庭が省かれているため璃奈ちゃんの独力で作り上げたように見え、璃奈ちゃんの技術力がスクスタよりも跳ね上がっているように感じます。

 作中で特に印象的だった場面といえば、同好会のメンバー全員で璃奈ちゃんの家に行った場面でしょうか。部屋の中に入ったメンバーは、ダンボールを覆い被った璃奈ちゃんと対面するのですが、最初に声をかけた愛ちゃんはもちろんメンバーの誰もダンボールを取ろうとはしませんでした。たとえ顔が見えなくても心を通じ合わせることはできる、そんなメッセージがここには込められており、それは璃奈ちゃんボードの大きなヒントになったように思いました。
 また、この前の場面ではドアとカーテンを閉めるカットが入っていました。璃奈ちゃんが心を閉ざす様子を描写したのだと思いますが、その後同好会のメンバーが訪れたときには家のドアを開けています。閉めた時は手動で、開けた時は電動で行ったことが非常に印象深かったです。どちらも璃奈ちゃん自身の手によって行われたことですが、感情や表情といったものを象徴したものが「手動」、情報機器や電子機器などの操作を象徴したものが「電動」だと私は捉えています。というのも、彼女は感情表現に苦しめられていましたが、ライブでは自分の感情を電子機器によって伝えるという工夫でそれを克服しました。感情を表に出せないために自分の想いを暗い部屋のような心の中にしまい込んでしまっていた彼女が、自分が得意とする情報処理や電子工学の分野を用いることでしまい込んでいた想いをドアを開けるように外へ出すことができた、と考えると、同好会のメンバーに自分の想いを打ち明ける際に「電動」でドアを開けたことも意味をもっているように私は感じました。

 そんな璃奈ちゃんが、璃奈ちゃんボードを携えて挑んだライブで披露した「ツナガルコネクト」。サビの歌詞にある「ちがう姿、ちがう形、なのにどうして同じ気持ち」には、自分のライブを見てくれているみんなは、当然自分と姿形は違うけれど同じ気持ちを共有したいという、璃奈ちゃんがスクールアイドル活動に込めた想いを感じ、また同時に、璃奈ちゃんボードがあるのとないのとでは感情の伝わり方は違うけれど、どちらの私も同じ気持ちだという璃奈ちゃんの思いが伝わってくるようでした。サビの終わりに「いまコネクトしよう」と歌うところでは、「いま」と言う時に一瞬璃奈ちゃんの口が映りますが、ここに、ボード越しでも一生懸命自分の想いを伝えようとする璃奈ちゃんの真摯な気持ちが見えてくるようで、このライブパートで一番好きなシーンです。

 璃奈ちゃん自身は非常に感情豊かな女の子です。他の人と同じように楽しいことは好きだし、急に上級生に話しかけられると怖いと感じることもある普通の子なのですが、自分の感情を表に出すことが苦手というだけでこれまで多くの悩みを抱えてきたのだと思います。それだけに、素顔の自分を受け入れて理解してくれる、愛ちゃんをはじめとした同好会のメンバーは彼女にとって大きな心の支えになっているのでしょう。今後は璃奈ちゃんボードの多彩な表情に期待しながら、素顔の璃奈ちゃんがどんな表情をするのかにも同じく期待しています。

 次回は彼方ちゃん回のようで、妹の遥ちゃんも登場することから姉妹の関係、なぜ彼方ちゃんがスクールアイドルをしているのかといった話題に切り込んでくるのではないかと予想しながら、来週の土曜日を楽しみに待っていたいと思います。