アニメ虹ヶ咲の感想文 9話 -朝香果林ちゃんの想い-

 「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」アニメ9話を視聴しました。今回はメンバー回としては最後になる果林ちゃんの回でした。果林ちゃんがスクールアイドルになるまでの葛藤はエマちゃん回で語られていましたが、今回は朝香果林ちゃんというひとりの人間、そしてソロで活動するとはどういうことなのか、ということに焦点が当てられていました。

 前半の山場といえば、ダイバーフェスの出場者をめぐって同好会のメンバー同士で譲り合っているところでしょう。それぞれ自分が出たいと思ってはいるものの、他のメンバーに遠慮して自己主張できないでいるところに、果林ちゃんは「衝突を恐れて活動の足枷になってはいけない」と意見を投じます。同好会のメンバーは協調性を重じていますが、それが今回は悪い方向へと作用してしまったということでしょう。そんな中で、「同好会が試されるライブ」と言っていたのは「ソロアイドルとしてやっていく覚悟があるのか」と言い換えてもいいかもしれません。自分にはないものをもっている同好会のメンバーをライバルと思い、切磋琢磨していきたいと考えているからこそ、誰かに出番を譲ろうとする姿勢を良しとしなかったのは、勝負にこだわる負けず嫌いな果林ちゃんならではの行動だと思います。
 その後、ダンススクールへ行こうとして道に迷い、ゲーマーズ前で侑・歩夢・せつ菜の三人と遭遇します。店内で他の学校のスクールアイドルのグッズを眺めていて、せつ菜ちゃんのグッズが置かれていないことを本人に訊いたところ、「ないですよ〜、ちょっと悔しいですけどね」と答えたせつ菜ちゃんを見る果林ちゃんの表情が印象的でした。自分の実力や知名度が足りていないことは認めつつも、それを卑下することなく向上心をもって前を向いているせつ菜ちゃんを見て、ただ楽しく活動できればいいと思っているわけではないことを改めて知り、顔を綻ばせたのでしょう。

 後半ではフェス当日の様子が描かれていますが、同好会のメンバー全員が出場を立候補したため、誰かを推薦することになり、果林ちゃんが代表に選ばれました。前半で果林ちゃんが言った「本気で立ち向かえるメンバーを選ぶべき」という言葉は、勝負から目を逸らさずに立ち向かっている果林ちゃんに当てはまる要素であり、「果林さんなら間違いないだろう」というメンバーからの安心と信頼の現れだったのでしょう。
 ところが、出番直前になって、自分のことを知らない人が大勢いるアウェーの場で、たったひとりでパフォーマンスをすることに大きなプレッシャーを感じてしまいます。偉そうなことを言ったのに、プレッシャーに押し潰されている自分を情けなく思う果林ちゃんですが、同好会のメンバーは「ひとりじゃない」と励まします。これまで、どのメンバーもひとりでステージに立ち、その中で孤独や不安、恐怖を感じることもあったのでしょう。しかし、ステージの上ではひとりでも、その裏には常に支えてくれる仲間がいて、決して独りで立っているわけではないことも感じています。だからこそ、果林ちゃんにかける言葉の数々は、それぞれの感じてきた想いが込められた「やさしさ」に満ちていたのだと思います。

 メンバーとハイタッチを交わした果林ちゃんがステージで披露した「VIVID WORLD」は、歌詞の随所に他人の存在が描かれており、ソロアイドルとして活動していても常に仲間が側にいてくれることの喜びが感じられます。「きみとだったら迷子だって悪くはないね」という歌詞は、方向音痴という完璧そうに見える果林ちゃんの意外な一面も、隠さずに見せることができると仲間への信頼が表れており、曲の最後には仲間の色をした輝きが降り注いでいたのが「仲間でライバル ライバルで仲間」を象徴する感動的な演出でした。
 思えば、1話や3話でメンバーに進むべき道を示し、今の同好会に至るまでの案内役とも言える果林ちゃんが方向音痴であるのは、誰かと一緒に道を歩みたいという果林ちゃんの想いの表れなのかもしれません。

 「仲間でライバル」という虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のキャッチコピーをタイトルにした今話でしたが、それは「ライバルで仲間」ということと表裏一体で、仲間と協力し合いながら競い合い、それぞれの道を共に歩んでいく関係を明示した、今作においてかなり重要な回となったと思いました。無理に他人と同調しようとせず、自分の道をまっすぐに進もうとしている果林ちゃんだったからこそ、彼女の見せる弱さや本音が「仲間でライバル」という言葉の深みを増すことができていると感じます。
 次回は恒例の合宿回のようですが、ここまで各メンバーの活躍が中心に描かれ、侑ちゃんの動きというのがあまりなかったので、今後数話の侑ちゃんの動きには特に注目してアニメを見ていきたいと思います。