アニメ虹ヶ咲2期の感想文 昨日までの私はいないから

 アニメ「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の2期7話を視聴しました。推しキャラである栞子ちゃんの回ということもあり期待と不安を交互に感じながら観ていましたが、結論としてかなりモヤモヤした気持ちを抱いて終わりました。

 本題に入る前に前提としてなのですが、アニメの構成としてはこれ以上ないほど綺麗にまとまっていたと思っています。栞子ちゃんのキャラとして「姉への憧れ」「やりたいことよりやるべきことを優先する」といった要素は不可欠だと思っていますが、スクスタで半年以上の時間をかけて描かれていたことを1話に収めていたことは素直に驚きました。
 栞子ちゃんの力があったからせつ菜ちゃんがスクールアイドルを続けていられるというのもアニメとスクスタで差異はあれどしっかり描かれていましたし、薫子さんのスクールアイドル時代を描くことで栞子ちゃんが姉を慕っていたことがより深く伝わってくる、三船栞子というキャラクターを紹介しつつ同好会の加入までを描くという点においては非常に円滑な話であったと思います。

 しかし、仮にアニメで始めて栞子ちゃんを見たとして、栞子ちゃんを今のように推していたかというとそうではないように思えます。

 スクスタでの栞子ちゃんは「適性」を重視するあまり融通が効かず、他者の行動を曲げてでもその人の適性にあったことをさせる少女でした。同好会を廃部にしようとしたり、スクールアイドルを無駄なものと決めつけていたりした彼女が、様々な人との衝突や同好会との交流を経て「やってみたい」という気持ちを胸にスクールアイドルへの一歩を踏み出す、というのがスクスタの1年目に描かれた栞子ちゃんです。
 私はこの栞子ちゃんに強く心を打たれました。いつも相手のためを想って行動しているのに、それが受け入れてもらえない。見え隠れする自分の想いに素直に向き合うことができない。そんな真面目で優秀だけど不器用な彼女が様々な葛藤と戦いながら、スクールアイドルから背中を押され手を差し伸べられ、小さな、でも確かな一歩を踏み出した。非生産的だと考えていた「興味」に突き動かされ、未知への不安を感じながらも前へと進んでスクールアイドルを始めた三船栞子というキャラクターが大好きになりました。

 確かにアニメは綺麗にまとまっていました。しかし、綺麗にまとまりすぎていた、とも感じています。スクールアイドルに惹かれていくと共に自分自身も成長していく彼女に魅力を感じていた私にとって、アニメの展開は些か速すぎました。

 また、栞子ちゃんというキャラクターの価値観自体が侑ちゃんへのメッセージ性をもっているものとして扱われているのも少し気になってしまいました。ランジュちゃんが「自分のやりたいことに集中するべき」と侑ちゃんに言ったように、栞子ちゃんの「身の丈に合わないことに入れ込むより、向いていることだけに全力を尽くす」という言葉も、音楽科での成績が伸び悩んでいる侑ちゃんに突き刺さる言葉だったと思います。
 正直なところ私が気にしすぎているだけなのですが、「スクールアイドルに夢を与えられた人がどのような道を歩むのか」というストーリーのゴールへ向かうための一つの通過点として栞子ちゃんの価値観が使われているように感じてモヤっとしました。

 先述したとおり、アニメが悪かったとは全く思っていません。裏方として文化祭とスクールアイドルフェスティバルの開催に尽力し、幼い頃から抱いていた姉とスクールアイドルへの憧れをひとりでステージに立って結実させた栞子ちゃんはとても輝いていました。
 それでもやはり、結局うまく言葉にすることはできないのですが、私はスクスタで輝いている栞子ちゃんの方が好きなのです。