アニメ虹ヶ咲の感想文 1話 -上原歩夢ちゃんの想い-

 アニメ「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」が始まりました。虹ヶ咲がまだ「PDPの子たち」という括りであった頃からずっと追いかけていた身としては、「ようやくアニメ」という気持ちも、「もうアニメ」という気持ちもあり、不思議な感覚です。そんな中で始まったアニメですが、期待通り、想像以上の作品に仕上がっていたと感じます。語り尽くせないほど感想はありますが、その中でも今回は上原歩夢ちゃんに焦点を当てていきたいと思います。

 まず、歩夢ちゃんを語る上で高咲侑ちゃんの存在は欠かせません。幼なじみで、基本的に二人一組で行動していることが多いというところは原作のスクスタ通りですが、スクスタよりも歩夢ちゃんが主張する場面が増えています。これは、侑ちゃんの性格がスクスタの「あなた」と異なっていることも一因として考えられます。それでも、作品初期ではとにかく「あなた」について行く少女だった歩夢ちゃんが、スクールアイドル同好会へ行こうとする侑ちゃん引き止めようとしたり、自分の意見をはっきり言う場面があったりしたことは、最近のスクスタのストーリーでも垣間見る歩夢ちゃんの秘めた意思の強さが現れているように感じました。これらの場面は、スクスタ内での歩夢ちゃんの成長を一番近くで見届け、「強い歩夢」を知っている大西亜玖璃さんの力強い演技もあって、より一層歩夢ちゃんの想いが伝わってきました。

 個人的な一押しが、終盤で歩夢ちゃんが「私、好きなの!」と言う場面ですが、この場面がとにかく素晴らしかったです。
 まず、想いを伝える直前に一歩足を踏み出すカットが描かれています。この後、歩夢ちゃんは自分の夢を語るのですが、正にこの「一歩」が、彼女の1stソロ曲である「夢への一歩」と重なりました。もちろん、この曲はスクスタのストーリー内での歩夢ちゃんの最初の曲ですが、歩夢ちゃんの夢である「自分に素直になりたい」と、アニメでの歩夢ちゃんの最初の曲「Dream with You」、「あなた(侑)と一緒に夢を見たい」に繋がる点で、この一歩は歩夢ちゃんが夢へと踏み出した最初の一歩だと思います。
 次に、ここでは「好き」の対象は明確に描かれてはいません。ピンクの服が好きと言ったり、スクールアイドルをやってみたいと言ったり、それ自体に嘘はありませんが、ここでの「好き」の対象には高咲侑ちゃんも含まれているでしょう。それを素直に伝えられないのは、きっと「今はまだ、勇気も自信も全然だから」。しかし、「これが精いっぱい」と侑ちゃんに渡したお揃いのパスケースには、「一緒に夢を見てほしい」という想いが確かに込められていたと感じました。
 そして、歩夢ちゃんはこの侑ちゃんとの会話で初めて、スクールアイドルに対する自分の気持ちを口にして、スクールアイドルになる決心をします。序盤と中盤ではスクールアイドルに対してそれほど興味を持っている様子はなく、天王寺璃奈ちゃんに「好きなの?スクールアイドル。」と聞かれた時も言葉を濁していました。しかし、この場面では、スクールアイドルの動画を自分も見ていた、想いを真っ直ぐに伝えることのできるスクールアイドルはすごい、と告げます。この歩夢ちゃんの心情の変化を、私は二つの要因によるものだと考えます。
 ひとつめは「自分の気持ちに素直になろうとしたから」。これは先ほども述べましたが、歩夢ちゃんは自分の気持ちに素直になりたいと思っています。せつ菜ちゃんのステージを見たときに、歩夢ちゃんも侑ちゃんと同様にトキメキを感じていた。自分もあんな風に自分の想いを素直に伝えられるようになりたい、そう思った歩夢ちゃんの「素直に想いを伝えること」の第一歩が、スクールアイドルになるという宣言だった。
 ふたつめは「侑ちゃんの側にいたかったから」。私はこちらの理由が主だと考えています。スクールアイドル、特にせつ菜ちゃんに夢中になっている侑ちゃんが「優木せつ菜“ちゃん”」と“ちゃん”付けで呼んでいることに、歩夢ちゃんは敏感に反応をします。ここで歩夢ちゃんはせつ菜ちゃんに対して、嫉妬に近い感情を抱いたのではないかと思います。せつ菜ちゃんに出会ったときに止まらなくなってしまう気持ちとは、「侑ちゃんを取らないで」という気持ちだったのではないでしょうか。そこで、予備校の話題(自分と共に過ごす)を出したり、スクールアイドル同好会へ行くこと(せつ菜に出会うこと)に消極的になったりしていました。
 しかし、「夢を追いかけている人を応援するできたら、自分も何かが始まる。そんな気がしたんだけどな。」と言う侑ちゃんを見て、これまで見たことのないほど夢中になれているものへ突き進もうと動き出した彼女を止めることなんかできないと思った歩夢ちゃんは、それなら自分が「夢を追いかけている人」=「スクールアイドル」になって、侑ちゃんと一緒に進みたいと思い、スクールアイドルになる決心をした。
 こうして、自分の想いを打ち明け、スクールアイドルになる決心をした場面は幾度となく見返すほど気に入っています。

 総じて、アニメ化にあたって多少の設定変更は見受けられましたが、歩夢ちゃんの「あなた(侑)のために」という根本的なところがしっかりと表現されている1話となっていて、今後の動向にもますます期待が持てる始まりとなったことに素直な喜びを感じています。次回は私の推しである中須かすみちゃんがメインとなる回のようで、Cパートや次回予告では豊かすぎる表情を見せてくれているので、今から次の放送が待ち遠しく思っています。