女性声優からのレスを全力で貰いにいった話

 Liella! 3rd LoveLive! Tour ~WE WILL!!~ 大阪公演。1期生の5人にとっては2nd LoveLive!の千秋楽を飾った地であり、2期生の4人にとっては先輩たちがかつて立った舞台に自分たちも共に立つという大きな意味をもつ大阪城ホールで開催されたそのライブに、私も現地で参加することが叶った。

 この日の私は、膨れ上がる高揚感と幾何かの緊張感をもってライブ会場に足を踏み入れた。なぜなら、この日の座席が

        スタンド席

                 1列目

 だったからだ。これが意味することはすなわち「ロッコが超至近距離でやってくる」ということである。この千載一遇の好機を逃すことは許されない、と謎の決意を抱いて臨んだライブの思い出の一部を以下にしたためていこうと思う。(都合上レスの話ばかりでライブパフォーマンスに関しては割愛するがあしからず)

 

 早速、表題の件について述べていくのだが、前提としてこれだけは言っておきたい。
 レスが返ってこなかったからといって、演者を非難するのは言語道断である。
 そもそも、間近で見られるというだけでも僥倖の極みであり、演者は絶えずこちらに目線をくれたり、手を振ったりしてくれているのだから、それだけでも私たちにとっては十分すぎるのだ。だからこそ、返ってこないことが当たり前であるとして、淡い希望を抱きながらもらいにいくものがレスなのだと私は認識しているということは断っておきたい。

 と言ったところで本題なのだが、まず『プライム・アドベンチャー』はマジで何も起こらなかった(大熊和奏ちゃんからは愛知でレスを貰ったのでこれ以上貰うのはおこがましいという気持ちも少しあった)ので割愛し、『エンドレスサーキット』。ペイトン尚未ちゃん(以下ペイちゃん)側のスタンドだったので、トロッコが迫ってきたのを確認するや否や、両手をギャラクシーな形に変形させ、左手は左目の横に、右手は指を下にした状態で掌を相手に向ける形でポーズを決める。
「これなら間違いなくレスを貰える」という確信をもって待ち構えていたのだが、これが空振り。

 死ぬほど恥ずい

 ポーズを決めてまでレスを貰いにいって空振ったこともそうだが、なによりも驕った考えで失敗しているところが本当にダサい。ホームラン予告をしたのに三球三振したバッターはきっとこんな気持ちなのだろう。

 とはいえ、この作品が教えてくれた「あきらめないキモチ」を胸に抱き、今後の曲へと気持ちを切り替えていく。(ちなみにLiyuuちゃんは後頭部が爆速で通り過ぎて行ってレスどころではなかった)

 

 そして『POP TALKING』。ペイちゃんの乗ったトロッコがこちらへやってきたので、先ほどのリベンジを果たすべく同じポーズでリトライを行う。すると、ちょうど私の真正面にやってきたあたりでペイちゃんが同じポーズをとってくれた。「計画通り」とまたも驕っている私だったが、その驕りはペイちゃんの表情に完全に破壊された。

片目を閉じてこちらを見ている

片目を閉じてこちらを見ている

片目を閉じてこちらを見ている

 これは、そう、ウィンクというやつだ。鮮やかすぎて一瞬未知のなにかが起こっているように感じたが、確かにウィンクだ。ポーズだけだろうと高を括っていた愚かな私の心は超銀河的な瞳の一撃に粉砕され、その後の曲の記憶を失ってしまったのだが、後に連番者である友人はこう語った。 
「トロッコが通り過ぎた後、急にブレードの色がメロングリーンに変わっていた。
 現金すぎる」

 

 『ユートピアマジック』のイントロが始まるとともに意識が大阪城ホールへ帰ってくる。そうだ、まだ終わっていない。最推しである伊達さゆりちゃん(以下伊達ちゃん)からレスを貰うまでは床へ蕩け落ちるわけにはいかない。今にもバイバイしそうな心をなんとか繋ぎ止めながら、伊達ちゃんの乗っているトロッコを今か今かと待ち構える。
 今回取っているポーズは、ピースした両手の甲を相手に向ける形で両目の隣にセットするというもの。
 個人的な見解としてレスを貰う時のポーズは
 1.一目見ただけで同じポーズを取れるもの
 2.周囲の人間がしていないようなもの
 3.実際に演者にしてほしいもの
 が好ましいと考えており、先述したペイちゃんに向けたポーズもこれを意識したものだ。
 いよいよ伊達ちゃんの乗ったトロッコが正面に来る。こちらの存在を確認した伊達ちゃんは、少し顎を引いて、人差し指と中指の間を開いた両手を美しい両目の隣に持ってくる。

 ところで日本には「鬼に金棒」という諺がある。ただでさえ強い鬼に武器となる金棒を持たせることで強さを増すことから、元から強さを持っている人に要素を追加することで更に強さが加えられるという意味を持つ言葉だ。「獅子に鰭」「虎に翼」など多くの類義語が存在するこの諺だが、私は新たな類義語が生まれる瞬間を目の当たりにしてしまった。

 「伊達さゆりに上目遣い」

 脳が焼き切れる。最推しが同じポーズをとっているだけでも限界を迎えつつあった脳が、上目遣いという金棒によって完全に破壊されてしまった。自分の人生は今この瞬間のためだけに存在していたとすら思えた。永遠とも思える一瞬を堪能した私の脳が、一瞬を永遠とすべく全力で記憶の定着に勤しんでいたことを、今ブログを書いている私自身が最も讃えていることは言うまでもない。

 

 夢遊病のような状態になってしまったが、直後のトロッコには1期生で2番目の推しである青山なぎさちゃん(以下青山ちゃん)と、2期生で最推しの鈴原希実ちゃん(以下鈴原ちゃん)がいる。こうなったら最後まで全力で駆け抜けてやる、とレス貰いという名の戦いを継続する。

 まず青山ちゃんだが、結論から言おう。貰った。
 ポーズを考える余裕などまるでなかったので先ほどと同じポーズだったが、青山ちゃんの表情は伊達ちゃんとは打って変わって満面に笑みを湛えた煌めきの結晶のようなものだった。”かわいさ”と”美しさ”をこの世で最も高水準に両立させたその姿は、後世に絵画として残せたのならば世界的名画となることは間違いなかっただろう。細めた目にあどけなさを残しつつもどこか気品を感じさせるその笑顔は、ぐちゃぐちゃになっていた私の情緒を優しく包み込んでくれるようだった。

 そして、鈴原ちゃんついては、ほとんどアリーナ側を向いていたこともあって半ば諦めていた。実際、できすぎなほどこれまでレスを貰ってきたのだからもう十分だろうという気持ちも確かにあった。ここで鈴原ちゃんからもレスを貰えるほど甘くないだろう。しかし、トロッコが目の前を通り過ぎて少ししてから、鈴原ちゃんがスタンドのほうへ体を向けた。この時、ほぼ無意識に体が動き、鈴原ちゃんの視界に少しでも入ることを祈っている私がいた。
 そしてそれは実を結んだ。

 その時の鈴原ちゃんの表情は、かわいかった。なんというか、かわいかった。それしか言えないのかと言われても仕方がない。だってかわいいのだから。
 
彼女がよく自撮りで見せる、ちょっと”ムッ”としたような表情と両手のポーズが合わさったその姿は、広辞苑の「かわいい」という語の説明欄にそのまま掲載してしまえば完璧に意味を表してしまうだろう。

 

 ここで完全に燃え尽きた私は『1.2.3!』で目の前にトロッコが来たときは、「うわぁかわいい」と目の前に来る演者に癒しを感じているだけの存在と成り果てていたし、これ以上レスを貰うと栄養過多で今後の生活に重大な支障をきたしそうなので、残りの時間はずっと水面に漂う木の葉のような心持ちだった。

 

 こうして文字に起こしてみると様々な感情が渦巻いていたライブだったと振り返ることができるが、ライブ中はこんなことを考えている余裕などなく、本当にただただ夢中だった。正直、言語化できないものも多く心に刻み込まれているのでここに書いたことが私の感じた全てではないのだが、これだけは確実に言える。

 これからもLiella!の応援を全力で続けていきます。