スーパースター1話の感想文

 いよいよ始まったラブライブ!シリーズの新作である「ラブライブ!スーパースター‼︎」。日曜日の夕方にNHKで放送されるという形態には驚きましたが、内容は新しい風を感じながらラブライブ!が歩んできた道のりを噛み締められるようなものだったと感じています。

 今作の主人公である澁谷かのんちゃんは歌うことが大好きなのに大事な場面になると歌えなくなってしまうという女の子です。それが原因で希望していた音楽科に入ることができず、スクールアイドルをやろうという唐可可ちゃんの誘いも断ってしまいます。これまでの作品であれば、主人公がスクールアイドルという存在に魅了され、周囲の人々に影響を与えながら次々と仲間を作っていくというのが定番でしたが、今作においてかのんちゃんはそうした流れと異なるキャラクターでした。個人的な感覚としては「サンシャイン‼︎」における梨子ちゃんが近いかもしれません。
 また、可可ちゃんの誘いを受けた時点でかのんちゃんが既にスクールアイドルの存在を知っていたというのも見逃せない点だと思います。これまでは「スクールアイドル、ってなに?」というところからスタートしていたのが、スーパースター‼︎ではスクールアイドルという文化が日常に溶け込んでいます。もちろん全ての人間がスクールアイドルに対して好意的ではないのですが、μ'sが概念を打ち立て、Aqoursが継承しさらなる広がりを作り、虹ヶ咲が多様性を示した、これまでのスクールアイドルとラブライブ!が歩んできた歴史を感じられる一幕でした。

 先述したようにこれまでの主人公像とは異なるかのんちゃんですが、では主人公らしくないのかといえばそんなことはありません。葉月恋ちゃんがスクールアイドルを否定するのに対しまっすぐ反論してみせ、相手の言葉に折れることなく自分の意見を貫き通す様子は、自分に確かな芯を持っている主人公そのものであると思います。
 可可ちゃんの誘いを断り、一度は帰ろうとしたかのんちゃんでしたが、このままの自分でいいのかという自問自答を経て「歌が好き」という自分の気持ちに背くことをやめたところで澁谷かのんちゃんのスクールアイドルとしての物語が始まりました。これまでの主人公もスクールアイドルに夢中になるきっかけとなったのは「何かを変えたい」という想いだったと思います。その「何か」とは、廃校という現実であったり、普通な自分であったり、本当に漠然とした何かであったりと様々ですが、かのんちゃんにとっては「好きなことから目を背け続けている自分」を変えたくてスクールアイドルの道へと足を踏み出したのではないでしょうか。

 話は変わって、かのんちゃんを演じている伊達さゆりさんについてです。伊達さんは一般公募オーディションで選ばれたキャストの一人であり、つい先日までは普通の高校生であった方です。ラブライブ!の世界に憧れ、実際のオーディションで夢を勝ち取ったということだけでもドラマのある人物なのですが、LoveLive!Daysにて掲載されていた伊達さんのインタビューでは歌唱審査がボロボロだったと語っていらっしゃいました。人前で歌うことが苦手で、それでもそれを乗り越えていくかのんちゃんの姿とオーディションでの伊達さんの姿が重なって、かのんちゃんと共にラブライブ!の世界に入ってきたのだと思うとかのんちゃんを演じているのが伊達さんで良かったと心から嬉しく思います。

 まだアニメは始まったばかりで、今後のさらなる展開に大きな期待を寄せながら、ひとりのラブライブ!シリーズのファン、そしてLiella!のファンとして応援を続けていきたいと思います。