スーパースター8話の感想文

 ラブライブ!スーパースター‼︎の第8話を視聴しました。学園祭の開催をめぐって音楽科と普通科との衝突があった回でしたが、学校の背景や隠された歴史が明らかとなる「スクールアイドル」を扱う作品においてこれまでありそうでなかった展開が見られた回でもありました。

 これまでずっと謎だった「学校アイドル部」の看板や恋ちゃんのお母さんの写った写真などの真実が明らかとなり、結ヶ丘の前身として神宮音楽学校という学校がありました。そこに在学していた恋ちゃんのお母さんはスクールアイドルとして廃校を防ぐために活動していたのですが、結局廃校を阻止することはできなかったという歴史があり、それが現在の恋ちゃんが結ヶ丘でのスクールアイドル活動に反対している原因ともなっていました。恋ちゃんは母がスクールアイドル活動を後悔していたのだと考えていましたが、実際にはスクールアイドル活動を通してかけがえのない思い出を刻んでいたという話でした。
 この話を聞いたとき、思わずAqoursのことが頭をよぎりました。彼女たちも廃校を阻止するという目的こそ叶いませんでしたが、彼女たちだけの輝きを掴むことができ、かけがえのない時間を過ごしていたと思います。これまでのシリーズで、廃校を阻止して学校を救ったμ's、廃校となっても学校の名前を残すことのできたAqoursが描かれてきたからこそ、今回の神宮音楽学校で行われていた学校アイドル部の活動にさらなる深みが生まれていると感じました。
 思えば、スクールアイドルというのは学校の一部活です。何かを成せたから良い、成せなかったら悪いというものではなく、学生という限られた時間の中で輝く青春の一幕こそが人生におけるかけがえのないものであり、それに惹かれたからこそ自分はラブライブ!というシリーズを推しているのだと再認識させられました。

 また、今回はかのんちゃんの成長も描かれていました。恋ちゃんの抱えている事情を知って音楽科と普通科の生徒たちに掛け合ってみたり、学校アイドル部のことを調べるために理事長と一対一で話したりといった行動力の高さは、自分の意思をまっすぐに貫くかのんちゃんらしいものでした。それに加えて、学校アイドル部のノートを持って壇上に上がったかのんちゃんは周囲の視線を感じながらも恋ちゃんに伝えたかった想いを真摯にぶつけていきます。人前で歌うことのできなかった彼女がここまでのことを成せたのは、これまでのスクールアイドル活動の賜物なのだと思います。
 結果として、初めはギクシャクしていた音楽科と普通科が一丸となり、皆が笑顔で学園祭を開催することができました。様々な人々を結びあわせ、歌で自分の想いを届けていくかのんちゃんの姿は、恋ちゃんのお母さんが結ヶ丘という学校名に懸けた想いを体現しているようでした。

 直接は語られていませんが、「自分たちは何のために歌うのか」という6話での問いに対する答えも表れていたと思いました。それは、ライブ前に行われた5人による初めての掛け声です。シリーズお馴染みの一人ずつ数字を言っていくシーンに感動するのと同時に、「Song for me! Song for you! Song for all!!」という言葉に彼女たちの想いが込められていたように感じました。彼女たちの歌は目標に突き進む自分のためであり、歌を届ける相手のためであり、自分たちに関わるすべてのためのもの。特に、誰かのために歌うだけではなく自分のために歌うというのが、「ラブライブ!スーパースター‼︎」というタイトルが掲げている「私を叶える物語」が表顕したものに思えて非常に好きな部分です。

 こうして5人揃っての初めてのステージで披露された「Wish Song」。隣に寄り添うような優しい曲調でありながら、歌詞にはまっすぐな想いが乗せられた、正に人々の想いを結び合わせるような素敵な曲でした。
 特に気に入っているのは衣装で、恋ちゃんがお母さんの着ていた衣装を受け継ぎ、神宮音楽学校の学校アイドル部から結ヶ丘女子高等学校のスクールアイドル部に想いが継承されたこと、その恋ちゃんと同じ衣装を他のメンバーも纏っていることで、母が亡くなってから独りだった恋ちゃんに仲間ができたこと、白を基調としたシンプルな衣装に、歩み始めたばかりの新設校でスクールアイドルを行う少女たちの初々しさが表れていることなど、あの衣装が持っている意味は非常に大きなものだと感じました。

 次回はようやく全員揃って一歩踏み出すことができた結ヶ丘女学院スクールアイドル部が、「Liella!」という名前を手に入れる回になりそうです。これからの活動の中で、5人がどのように関係しあっていくのか、次回以降も楽しみに待っていようと思います。