スーパースター10話の感想文

 ラブライブ!スーパースター‼︎の第10話を視聴しました。「チェケラッ!!」という陽気なタイトルとは大きく異なる内容で、すみれちゃんの苦悩や可可ちゃんの覚悟が見て取れる感動回でした。

 地区予選の課題がラップということで、作品序盤でまんまるラップをしていた千砂都ちゃんが主軸になる回だと思っていましたが、実際は即興ラップを披露したすみれちゃんをセンターとして曲作りを始めるという回でした。この時は中国語でラップをし始める可可ちゃんや、完成度の高い短歌を詠む恋ちゃんなどコミカルな雰囲気でしたが、いざ練習となるとすみれちゃんはこれまで経験したことのない最も注目される場に立つことに対して気後れしてしまいます。その様子をかのんちゃんは「自信がないんだよ」と言っていたのですが、その表情はとても穏やかで、「私もそうだったから」というかのんちゃん自身の気持ちが表情に乗っていました。

 陰でも必死に努力しているすみれちゃんを見た可可ちゃんはすみれちゃんのために衣装を作り上げました。ラップといえばストリートやパンクなファッションになるのだと思っていたので優美なドレスが出てきたことには驚きましたが、後に披露される曲調を踏まえると固定観念に囚われない可可ちゃんの独創的なセンスが存分に発揮された衣装だったのではないでしょうか。

 しかし、実際のパフォーマンスを見た結ヶ丘の生徒たちやその周りの人々はセンターは他の人がやった方がいいと言います。すみれちゃんはなんでもそつなくこなす子ですが、器用貧乏とも言える子なのでしょう。なので、物語を支える脇役としては選ばれるのですが、圧倒的な個性を発揮して物語の中心に立つことはできなかったのだと思います。そこへ追い打ちをかけるように可可ちゃんの事情を聞いてしまい、絶対に結果を残さないといけない重圧がのしかかったことで、周囲の客観的な意見や自分を誘ってくれた仲間への想い、そして何より無力な自分に対する自己嫌悪が爆発したのがあの場面でのすみれちゃんだったのだと感じました。

 そんなすみれちゃんを追いかけてきた可可ちゃんがすみれちゃんにセンターの証とも言えるティアラを渡す場面では、頑なに受け取ろうとしなかったティアラが風に吹かれて飛んで行ってしまったときに真っ先に駆け出したすみれちゃんが印象的でした。すみれちゃんが加入した4話でもそうでしたが、自分は舞台の中心に立てない人間だと達観したように見えながら、それでも諦めきれずに足掻き続けているのがすみれちゃんです。今回の場面でも、これまでの経験から自分にはセンターが務まらないと拒否し続けていても、思わずティアラを追いかけてしまうすみれちゃんにそれが現れていると思います。また、最後まで諦めずに手を伸ばし続けた結果、求めていた憧れに手が届き、華麗に着地するのではなく、勢い余って茂みに突っ込んでしまう泥臭い感じも平安名すみれというキャラクターらしさなのでしょう。それまで人前で見せてこなかったガムシャラな面を垣間見たからこそ、これまで本心ではすみれちゃんのことを必死に輝きを追い求める同士だと認めながらも素直になれなかった可可ちゃんが初めてすみれちゃんの名前を呼んだのだと思います。

 自分の殻を破ったすみれちゃんがセンターとして披露した「ノンフィクション!!」というタイトルは、これまで思い描いていた舞台の中心に自分が立っているのは虚構ではなく現実のことで、それを叶えたのは紛れもなく自分の努力であることを表しているように感じました。妖艶で挑発するような表情や仕草のダンスからは、周囲の視線を釘付けにしてみせるといった気概を感じ、今話のタイトルである「チェケラッ!!」とは単にラップでよく聞くフレーズであるだけでなく、「私を見て!!」というすみれちゃんの魂の叫びでもあったのかもしれません。

 余談ですが、すみれちゃんを演じているペイトン尚未さんは以前アイドルをやっていたそうです。アイドルの輝きに憧れてアイドルを目指したペイトンさんでしたが、「アイドルは日本人の可愛い女の子がなるもの」と思っており、劣等感を感じていたそうですが、それでも諦めずにアイドル道を歩み続けていたというのは、正に平安名すみれちゃんそのもののようの感じます。実際、雑誌のインタビューでも「自分とすみれちゃんは“輝きたかった者同士”」と話しており、そういった想いがあったからこそ今話のすみれちゃんのセリフひとつひとつに画面の向こうからも伝わる特別な迫力があったのだと思います。

 いよいよ物語も佳境に入っており、今後の展開もますます気になるところです。さらに結束を強めたLiella!の5人がどのようにラブライブ!に挑んでいくのか楽しみに来週の放送を待ちたいと思います。