「虹色Passions!」の歌詞についての一人語り

 10/21に虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメOPが発売されました。アニメ2話で初めて聴いた時からとても好きな楽曲だったのですが、歌詞を見てみるとますますこの曲の良さが感じられたのでそれをこれから述べていこうと思います。(『』内の言葉は歌詞カードより抜粋しております。)

 初めてこの曲を聴いた時に「あぁ、侑ちゃんの曲だな」と感じました。『予感のなか踏みだすよ最初の一歩』であったり、『溢れだすこの気持ち 胸の奥もう止まらない』であったりは正に1話の侑ちゃんそのもので、歌っているのは同好会のメンバーであっても、これは侑ちゃんの想いを詰め込んだ歌詞です。
 では2番も侑ちゃんが主体となっている歌詞なのか、というと少し違う気がします。Aメロの『ココロの重ね着はさぁ脱ぎ捨てちゃおうよ』や、Bメロの『もしも不安になったなら思い出して欲しいよココにいる』という歌詞は侑ちゃんから同好会のメンバーに宛てたメッセージのように感じます。そして、サビは『輝くよいつまでも』と始まります。これは、侑ちゃんのメッセージに対してメンバーが応えている、ということではないでしょうか。つまり、2番のサビ部分では同好会のメンバーの想いが描かれているということです。

 このように思う根拠としては、1番では『ミライ』『キセキ』と書かれているのに対して2番では『未来』『奇跡』と書かれていること、1番では『シンパシー』だが2番では『エンパシー』になっている、の二点が挙げられます。

 一点目の表記の違いについて。侑ちゃん自身は「未来がどうなるか」について非常に漠然としています。「スクールアイドルを応援できたら、自分も何か変わるかもしれない」程度です。また、『キセキ咲いてくよ』とあるように、彼女にとって奇跡はこれから起こるもので、どんなことを奇跡と呼ぶのかまだまだわからないように感じます(せつ菜ちゃんのライブを見たことは奇跡と呼べるかもしれませんが、それを彼女が「奇跡」と感じているかは現状わかりません)。つまり、侑ちゃんにとって『ミライ』も『キセキ』もどんなものかわからない、だからこそカタカナで表記されているのだと思いました。
 対して、同好会のメンバーはそれぞれスクールアイドルを通して何をしたいのかを明確にもっています。それは言い換えると「未来を見据えている」ということだと思います。そして、彼女たちは『奇跡信じてる』と歌います。どんなことが起こるのかはわからないという点では侑ちゃんと同じですが、少なくとも、彼女たちは「侑ちゃんと出会う」という奇跡を一度体験しているので、「奇跡は起こる、起こせるものだ」と信じているのではないでしょうか。ですので、同好会のメンバーは『未来』『奇跡』とはっきり言うことができるのだと思います。

 二点目の『シンパシー』と『エンパシー』について。どちらの言葉も「共感」という意味をもちますが、シンパシーには同情の意が含まれており、ネガティブな場で使うことが多いそうです。しかし、この曲にネガティブな印象はありません。そこで、私はシンパシーを「寄り添う」という意味で解釈しました。同好会のメンバーひとりひとりに寄り添い、共に道を進んでいくということであれば、後の『そうきっとひとりじゃないよ いつもみんないるから 夢と夢繋いでいこう』にも繋がってくると思います。
 ではエンパシーはどうなるのかといえば、これは「他者の価値観を知ること」だと思います。同好会はそれぞれが、それぞれのスクールアイドル像をもって活動をしています。以前の同好会ではそのスクールアイドル像がぶつかり合って一度はバラバラになってしまいましたが、侑ちゃんとの関わりを経て、それぞれの価値観を尊重しながら活動するようになりました。だからこそ、他者の価値観に合うように自分を変えるのではなく、自分は自分らしくいる、という虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の主題に沿うためには『エンパシー』を重視するのでしょう。

 そして、ラストのサビは1番と音自体は同じものの、『ミライ』『キセキ』が『未来』『奇跡』になり、『虹色Passions!!』と「!」が一つ増えています。ここで、侑ちゃんと同好会の9人を合わせた「10人」の想いが合わさった歌になり、『夢と夢 叶えていこう』と侑ちゃんの夢と同好会メンバーの夢を叶えていこう、と歌い切ります。

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会はソロ活動を主とするグループです。しかし、この曲では先述した『シンパシー』や『ひとりじゃないよ』といった、「仲間と一緒にいる表現」が多く見られます。時に仲間のパフォーマンスから学び、時に仲間に自分のパフォーマンスを教える、そんな切磋琢磨する関係性にあるからこそ、ソロ活動であっても同好会の存在は不可欠であり、自分を表現することのできるかけがえのない居場所となっています。それぞれが思い描くものは違っていても、『また会おう ここで』と言えるのが、この同好会の素敵なところだと思います。

 総じて、様々な人物の想いが込められ、とても虹ヶ咲らしい楽曲だと思います。アニメはまだまだこれからですが、きっとこの歌詞にあるように『虹のMelodies』を響かせてくれるのだろうと期待しています。

アニメ虹ヶ咲の感想文 3話 -優木せつ菜ちゃんの想い-

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメ第3話を視聴しました。予想通りのせつ菜ちゃん回でしたが、せつ菜ちゃんのこと以外にもラブライブ!(作中のイベント)の存在が仄めかされるなど今回も気になるところの多い回でした。

 さて、中川菜々ちゃん(優木せつ菜ちゃん)といえば「大好き」をなにより大切にしている子です。アニメでは少ししか描写されていませんでしたが、アニメやラノベが好きなことや「優木せつ菜」として活動していることは家族には秘密にしています。自分の好きなことを抑圧された環境にいる彼女は、きっとそれだけ「大好き」を大切にするようになったのでしょう。中川菜々として猫(はんぺん)を追いかけていたときに、璃奈ちゃんの腕の中に入るはんぺんを見て「懐いているんですね」ではなく「大好きみたいですね」と言っていたところからも、彼女が「大好き」を大事に思っていることが窺えます。
 そんな菜々ちゃんが、音楽室で侑ちゃんとせつ菜ちゃんについて話す場面ですが、初めは侑ちゃんだけが光の当たるところにいて、菜々ちゃんは陰にいます。大好きなことをそのままに伝える侑ちゃんと大好きを押さえ込んでいる菜々ちゃんとの対比が描かれているようでとても好きな場面なのですが、同好会の話になると菜々ちゃんも光を浴びる場所へ移動しています。そこで話していることはせつ菜ちゃんのやってきたことの否定ですが、自分のやってきたことに対する悔恨の念がにじみ出ており、話し終えるとまた陰の方へと歩き出します。この場面を見ると、やはり菜々ちゃんはせつ菜ちゃんとしてスクールアイドル活動をしているときが一番輝ける瞬間であり、同好会にも未練を残していたように思えます。
 せつ菜ちゃんがスクールアイドルを辞めようとした理由は、自分の「大好き」で他の人の「大好き」を否定してしまったからでした。「大好き」の溢れる世界を作りたいと望む彼女にとって、自分のせいで誰かの「大好き」を邪魔してしまうことは本末転倒であり、スクールアイドルとしてラブライブ!に出るためにはグループが一丸となる必要があるのに、自分がいると和を乱してしまう。それならば、自分の「大好き」を抑えてしまう方が良いと考えてしまったのです。

 その菜々ちゃんを再びスクールアイドルの道へと引き戻したのは侑ちゃんでした。「大好き」をまっすぐに伝える侑ちゃんの姿は、中川菜々ちゃんが押さえ込んでいた姿で、優木せつ菜ちゃんがみんなに見せていた姿でもあります。だからこそ、侑ちゃんの言葉は菜々ちゃんとせつ菜ちゃんに届き、彼女が再び「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の優木せつ菜」として活動する始まりの歌「DIVE!」を歌わせるに至ったのでしょう。髪を解き、中川菜々から優木せつ菜へと変わる場面は「未来ハーモニー」のPVでも描かれていましたが、ここでは押さえ込まれていた「大好き」が溢れ出すように見えてとても好きです。
 そして、その「DIVE!」ですが、水底へと泳ぐ少女と鏡合わせになるようにもうひとりの少女がいます。これは中川菜々ちゃんと優木せつ菜ちゃんであることは間違い無いと思いますが、どちらが菜々ちゃんでせつ菜ちゃんなのでしょうか。ここに関しては様々な解釈ができると思います。例えば、水面へと上がることを「大好き」の解放と捉えるならば、それを水底へ泳ぐ少女が菜々ちゃんで、水面へと向かう少女がせつ菜ちゃんといえるでしょう。例えば、水上に「大好き」の溢れる世界があり、そこからやってきたせつ菜ちゃんが、自分を押さえ込もうとしている菜々ちゃんに手を差し伸べていると見ることもできるでしょう。個人的にはBメロで描かれている両者の表情から、水底へ泳ぐ少女=菜々、鏡合わせの少女=せつ菜、というように感じていますが。
 また、屋上で生徒に向けて披露された「DIVE!」ですが、作中で衣装をまとったパフォーマンスが描かれていたものの、実際には制服でパフォーマンスをしていたことになります。スクスタでもせつ菜ちゃんが制服でパフォーマンスをした描写はなく、「DIVE!」が制服で行った初めてのライブと言えるのですが、制服という学生を象徴する衣装を着てライブをすることは、正しく「虹ヶ咲学園」の「スクールアイドル」ということを強く印象づけるものだと感じました。

 今回は前回と打って変わりシリアスな場面の多い回でしたが、せつ菜ちゃんの苦悩が細かく描かれており、そのおかげで吹っ切れた表情でパフォーマンスをする彼女の姿がより一層輝いてみえました。本編とは関わりがありませんが、番組の提供を読み上げる声も、菜々ちゃんの声で読み上げる前半はやや重々しさを感じさせるものですが、せつ菜ちゃんの声で読み上げる後半は明るさ全開で笑顔のせつ菜ちゃんが目に浮かぶような声色だったことも印象的です。
 次回は「未知なるミチ」と、なんとも愛ちゃんらしいタイトルとなっていますが、彼女がどのようにスクールアイドルとなり、同好会に加入するのか、次の土曜日を楽しみに待っていたいと思います。

アニメ虹ヶ咲の感想文 2話 -中須かすみちゃんの想い-

 「ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の第2話が放送されました。1話の次回予告から中須かすみちゃんがメインとなる回であることはわかっていましたが、スクールアイドル同好会の方針が示された大変重要な回でもありました。

 かすみちゃんは私の推しキャラであるため、贔屓目に見てしまう点が多いかもしれませんがご容赦ください。かすみちゃんは「無敵級*ビリーバー」のPVにてアニメ作画で躍動する姿が描かれており、そのかわいさを存分に発揮していたのですが、実際にアニメで見てみるとこれがもうたまらないほどかわいかったです。コロコロと変化する豊かな表情、パタパタと動き回る一挙手一投足に彼女のかわいさが現れており、「やっぱりかすみんはかわいいなぁ」と再認識させられました。生徒会室でスクールアイドル同好会のプレートを見つけたところを中川菜々ちゃんに見られたところの表情や動きは特にお気に入りです。
 そんなかすみちゃんですが、以前の同好会ではせつ菜ちゃんと価値観の違いから衝突してしまいました。かすみちゃんが感じるスクールアイドルとは「かわいい」もので、それがせつ菜ちゃんのスクールアイドル像と食い違ってしまい、せつ菜ちゃんが価値観を押し付けてきているように感じて反感を抱いた、という次第です。この場面に関してはどちらが悪いというわけでなく、お互いの譲れないものがぶつかり合ってしまった結果なのですが、これが遠因となってしまったのかスクールアイドル同好会はバラバラになってしまいます。
 かすみちゃんにとって「かわいい」というのは絶対的な価値であり、また彼女のアイデンティティでもあります。スクールアイドルになったのも、元々は自分のかわいさを高めるためで、「かすみんが一番かわいい」という信念を強く抱いています。ただ、自分のことしか見ていないわけではなく、ファンのことを大事に思っていたり、歩夢ちゃんのかわいさを(自分ほどではない、と付け足しながらも)認めていたりと、決して自己中心的な性格ではありません。
 しかし、皮肉にもかすみちゃんは自分が反感を抱いた「価値観の押し付け」を歩夢ちゃんに対して行ってしまいます。意図して行ったわけでないにしても、自分の行いを悔い、どうすれば同好会を続けることができるのかを悩むかすみちゃんは、侑ちゃんの「自分なりの一番をそれぞれ叶えるやり方って、きっとあると思うんだよね」という言葉や歩夢ちゃんの自分を活かした自己紹介を見て、「いろんなかわいいもかっこいいも一緒にいられる場所」という同好会があれば、それは「世界で一番のワンダーランド」だと思えるようになります。

 さて、アニメ本編でかすみちゃん自身が言っている通り、自分のやりたいことを他人に押し付けるつもりはないし、それをすることは嫌だとかすみちゃんは思っているのです。それでも自然と他人にかわいさを求めてしまったのは、それだけ彼女にとって「かわいい」とは大切なものなのでしょう。そして、数あるかわいいものの中でも、特にスクールアイドルを選んだところから、彼女の中でスクールアイドルのもつ「かわいい」というのは「かわいい」の中でも上位に位置付けられているのだと思います。
 だからこそ「スクールアイドル=かわいい」という構図になっており、それ以外のスクールアイドルのあり方を受け入れがたい考えを無意識に持っていたのかもしれません。しずくちゃんと別れ、侑ちゃんと歩夢ちゃんを見つける前に「かわいい溢れるかすみんワンダーランド」と言っていたところからも、「同好会のスクールアイドルは全員かわいくあってほしい」と考えていたことが見えてきます。
 しかし、侑ちゃんと歩夢ちゃんと関わることでスクールアイドルはかわいいだけでなく、いろんな個性を持っており、また様々な個性をもつ人たちが集まった同好会の方がより素敵な場所であると考えを改めました。この考えの変化はかすみちゃんの新ソロ曲「Poppin' Up!」の歌詞にも現れており、「オンリーワンのきらめき」が溢れる場所が世界で一番のワンダーランドで、自分自身のもつ「かわいい」という「オンリーワンのきらめき」はこれまでと変わらず信じていく彼女の想いが綴られています。

 この「オンリーワンのきらめき」や、かすみちゃんが言っていた「やりたいことがあってスクールアイドルになった」というのは、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会というグループにおいて非常に重要な要素です。それぞれがもつ個性を活かし、他のメンバーとは異なる表現でスクールアイドルをする、というのはこれまでのシリーズではなかったことであり、ソロでの活動を基本とする虹ヶ咲の良さにも繋がる点です。
 また、かすみちゃんが作中で何度も「ファンのことを考えて」と発言しているところから、決してスクールアイドルを「目的を達成するための一手段」として捉えているのではなく、真摯にスクールアイドル活動をしているところが彼女たちの純粋さを感じ取れる点で、私の思う虹ヶ咲の好きなところの一つでもあります。

 次回予告では早くもせつ菜ちゃんが同好会に復帰しそうな雰囲気を見せています。スクスタでは最後に同好会に帰っていたので、次の回からアニメ独自のストーリーへと大きく舵を切っていくのだろうと大きな期待を抱きながら、次回を楽しみにまた一週間を過ごしたいと思います。

 

 

※蛇足

 歩夢ちゃんのウサギキャラ推しが強いアニメですが、スクスタの方では「わくわくアニマル」という衣装シリーズで歩夢ちゃんはウサギの格好をしています。かわいいので気になる方は是非。(ちなみにかすみちゃんはタヌキです。かわいいですね。)

アニメ虹ヶ咲の感想文 1話 -上原歩夢ちゃんの想い-

 アニメ「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」が始まりました。虹ヶ咲がまだ「PDPの子たち」という括りであった頃からずっと追いかけていた身としては、「ようやくアニメ」という気持ちも、「もうアニメ」という気持ちもあり、不思議な感覚です。そんな中で始まったアニメですが、期待通り、想像以上の作品に仕上がっていたと感じます。語り尽くせないほど感想はありますが、その中でも今回は上原歩夢ちゃんに焦点を当てていきたいと思います。

 まず、歩夢ちゃんを語る上で高咲侑ちゃんの存在は欠かせません。幼なじみで、基本的に二人一組で行動していることが多いというところは原作のスクスタ通りですが、スクスタよりも歩夢ちゃんが主張する場面が増えています。これは、侑ちゃんの性格がスクスタの「あなた」と異なっていることも一因として考えられます。それでも、作品初期ではとにかく「あなた」について行く少女だった歩夢ちゃんが、スクールアイドル同好会へ行こうとする侑ちゃん引き止めようとしたり、自分の意見をはっきり言う場面があったりしたことは、最近のスクスタのストーリーでも垣間見る歩夢ちゃんの秘めた意思の強さが現れているように感じました。これらの場面は、スクスタ内での歩夢ちゃんの成長を一番近くで見届け、「強い歩夢」を知っている大西亜玖璃さんの力強い演技もあって、より一層歩夢ちゃんの想いが伝わってきました。

 個人的な一押しが、終盤で歩夢ちゃんが「私、好きなの!」と言う場面ですが、この場面がとにかく素晴らしかったです。
 まず、想いを伝える直前に一歩足を踏み出すカットが描かれています。この後、歩夢ちゃんは自分の夢を語るのですが、正にこの「一歩」が、彼女の1stソロ曲である「夢への一歩」と重なりました。もちろん、この曲はスクスタのストーリー内での歩夢ちゃんの最初の曲ですが、歩夢ちゃんの夢である「自分に素直になりたい」と、アニメでの歩夢ちゃんの最初の曲「Dream with You」、「あなた(侑)と一緒に夢を見たい」に繋がる点で、この一歩は歩夢ちゃんが夢へと踏み出した最初の一歩だと思います。
 次に、ここでは「好き」の対象は明確に描かれてはいません。ピンクの服が好きと言ったり、スクールアイドルをやってみたいと言ったり、それ自体に嘘はありませんが、ここでの「好き」の対象には高咲侑ちゃんも含まれているでしょう。それを素直に伝えられないのは、きっと「今はまだ、勇気も自信も全然だから」。しかし、「これが精いっぱい」と侑ちゃんに渡したお揃いのパスケースには、「一緒に夢を見てほしい」という想いが確かに込められていたと感じました。
 そして、歩夢ちゃんはこの侑ちゃんとの会話で初めて、スクールアイドルに対する自分の気持ちを口にして、スクールアイドルになる決心をします。序盤と中盤ではスクールアイドルに対してそれほど興味を持っている様子はなく、天王寺璃奈ちゃんに「好きなの?スクールアイドル。」と聞かれた時も言葉を濁していました。しかし、この場面では、スクールアイドルの動画を自分も見ていた、想いを真っ直ぐに伝えることのできるスクールアイドルはすごい、と告げます。この歩夢ちゃんの心情の変化を、私は二つの要因によるものだと考えます。
 ひとつめは「自分の気持ちに素直になろうとしたから」。これは先ほども述べましたが、歩夢ちゃんは自分の気持ちに素直になりたいと思っています。せつ菜ちゃんのステージを見たときに、歩夢ちゃんも侑ちゃんと同様にトキメキを感じていた。自分もあんな風に自分の想いを素直に伝えられるようになりたい、そう思った歩夢ちゃんの「素直に想いを伝えること」の第一歩が、スクールアイドルになるという宣言だった。
 ふたつめは「侑ちゃんの側にいたかったから」。私はこちらの理由が主だと考えています。スクールアイドル、特にせつ菜ちゃんに夢中になっている侑ちゃんが「優木せつ菜“ちゃん”」と“ちゃん”付けで呼んでいることに、歩夢ちゃんは敏感に反応をします。ここで歩夢ちゃんはせつ菜ちゃんに対して、嫉妬に近い感情を抱いたのではないかと思います。せつ菜ちゃんに出会ったときに止まらなくなってしまう気持ちとは、「侑ちゃんを取らないで」という気持ちだったのではないでしょうか。そこで、予備校の話題(自分と共に過ごす)を出したり、スクールアイドル同好会へ行くこと(せつ菜に出会うこと)に消極的になったりしていました。
 しかし、「夢を追いかけている人を応援するできたら、自分も何かが始まる。そんな気がしたんだけどな。」と言う侑ちゃんを見て、これまで見たことのないほど夢中になれているものへ突き進もうと動き出した彼女を止めることなんかできないと思った歩夢ちゃんは、それなら自分が「夢を追いかけている人」=「スクールアイドル」になって、侑ちゃんと一緒に進みたいと思い、スクールアイドルになる決心をした。
 こうして、自分の想いを打ち明け、スクールアイドルになる決心をした場面は幾度となく見返すほど気に入っています。

 総じて、アニメ化にあたって多少の設定変更は見受けられましたが、歩夢ちゃんの「あなた(侑)のために」という根本的なところがしっかりと表現されている1話となっていて、今後の動向にもますます期待が持てる始まりとなったことに素直な喜びを感じています。次回は私の推しである中須かすみちゃんがメインとなる回のようで、Cパートや次回予告では豊かすぎる表情を見せてくれているので、今から次の放送が待ち遠しく思っています。

 

2ndライブの感想文-栞子ちゃんについてのあれこれ-

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブ及びラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS」(以下スクスタ)のネタバレが多分に含まれています。ご了承ください。また三船栞子というキャラクターを押さえておくために前書きが長くなっておりますので、既に知っているという方は読み飛ばしていただけると幸いです。

 

 

 先日行われた虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブですが、このライブではシリーズとして初めての「同じ学校に通う十人目のスクールアイドル」が登場しました。三船栞子ちゃんです。

 彼女はスクスタのメインストーリー8章から、新たな生徒会長に立候補するという形で作品に登場しました。栞子ちゃんは虹ヶ咲学園の一年生で、それまでは優木せつ菜としてスクールアイドル活動を行っている中川菜々ちゃんが生徒会長も兼任していたのですが、その働きぶりが上に立つものとしてふさわしくないとして、栞子ちゃんが再選挙をもって新生徒会長になることを宣言し、生徒会長に就任した暁にはスクールアイドル同好会を廃部にするというところから彼女とスクールアイドル同好会との関係が始まります。
 詳しい過程は省略しますが、栞子ちゃんは人の資質を見抜くことに長けており、その人に最も適した道を示すことで学園の生徒の支持を集めていきました。結果として、再選挙の結果栞子ちゃんが新生徒会長に就任し、中川菜々ちゃんは生徒会長を辞任することとなります。

 彼女が同好会を廃部にするために出した条件をクリアした同好会は学校説明会でライブをする機会を得ますが、ここで栞子ちゃんにとっての試練が訪れます。栞子ちゃんの生徒会活動は人の適性だけを見て、人の興味に目を向けることはありませんでした。そして、そのやり方に明確な不満が現れたのが学校説明会での部活動紹介のミーティングです。彼女のやり方に反発する部が現れ始め、このままでは学校説明会が開催できなくなる、と同好会のメンバーに相談を持ちかけた栞子ちゃんに対して、「ライブができなくなると困る」と同好会が学校説明会の開催に協力することとなりました。

 ここまで、栞子ちゃんは一貫して「スクールアイドルは無駄なもの」「無駄なことに時間を割く意味がわからない」と主張しています。それならばと同好会が提案したのは「スクールアイドル同好会に体験入部してみる」、無駄なことになぜ一生懸命になるのかを知れば何か変わるのではないか、ということでした。
 こうして同好会と関係を深めていく中で、なぜ栞子ちゃんが適正にこだわるのかがわかってきます。彼女は、適性がないまま物事を続け、挫折したり報われないまま終わってしまう人を大勢見てきました。その中には彼女の姉も含まれています。そんな不幸が起こらないように、栞子ちゃんは人の適性に拘泥していたのです。しかし、その考えは同好会の活動を間近で見ているうちに少しずつ変化していきます。スクールアイドル活動は無駄なこと、でもその活動全てが無意味と言い切ることはできない、と。そして、栞子ちゃんは同好会の協力を得ながら、見事に各部活の納得する方針を打ち出し、学校説明会を行うことができました。

 学校説明会でのライブを終えた同好会はいよいよスクールアイドルフェスティバル(全国のスクールアイドルアイドルが集まるイベント、前回までのイベント運営が活動を辞めていたためにμ's、Aqours、虹ヶ咲で運営を行うことになった)に向けて始動していきます。会場を虹ヶ咲学園にするところまでは良かったのですが、そこでボランティアを1000人集めなければならないという大きな課題に直面します。当初は楽天的に捉えていた同好会の面々も、難航していくボランティア集めに様々な衝突、すれ違いを経て一度は開催を諦めるという結論を出してしまいます。(非常に濃密な話となり書ききれないため泣く泣く割愛)
 そんな同好会の様子を最初からずっと見守り続けていた栞子ちゃんですが、とあるメンバーの想いを聞き、大きな一押しをすることで無理だと思われていたスクールアイドルアイドルフェスティバルの開催を実現させます。そして、スクールアイドルアイドルフェスティバル当日、会場の見回りをしていた栞子ちゃんの前に彼女の姉、薫子さんが現れます。この薫子さんがスクールアイドルアイドルフェスティバルの前運営の代表で、栞子ちゃんの価値観に大きな影響を与えた人物でもありました。その薫子さんに、今ではスクールアイドルに魅せられ、応援する者の一人だと告げますが、応援するだけでいいのかと問われます。栞子ちゃんは、他のスクールアイドルと比べて歌やダンスが上手くない、何より「信念」をもっていないといって裏方に徹しようとします。しかし、そんな栞子ちゃんに薫子さんは「スクールアイドルでなければ得られないものがあって、あんたはそれを欲している」と言ってその場を後にしました。
 その後、スクールアイドルフェスティバルのアンコールの場面で栞子ちゃんは姉の言葉、そして同好会の後押しを受けてスクールアイドルとしてステージへ上がる決心をします。適性にこだわり、興味に価値を見出さなかった彼女が、ただ「やってみたい!」という強い気持ちに突き動かされて新たな一歩を踏み出したところで栞子ちゃんのスクールアイドルとしての道が始まりました。かなり雑にまとめているため、より詳しいことは実際にゲーム内で確認していただけると幸いです。

 

 さて、前書きが非常に長くなってしまったのですが、ここから2ndライブの話をしていきたいと思います。

 まず何と言っても栞子ちゃんのソロ曲「決意の光」。栞子ちゃんのもつスクールアイドルに対する不安や葛藤をそのまま歌詞にして、「悩んでいてもいい」というメッセージがこめられた曲となっています。曲調はいわゆる和ロックで、優雅に舞うようなダンスでありながら、時に激しくメリハリのある動きから、栞子ちゃんの内に秘める熱い想いが伝わってくるように感じます。以前の生放送で上原歩夢役の大西亜玖璃さんがこの曲調について「和の部分は栞子ちゃんの要素、ロックの部分は薫子さんの要素を取り入れているように感じる」(要約)と仰っていましたが、それを聞いて思わず膝を打つ思いでした。
 また、この曲にはダンサーの方がふたり付いてパフォーマンスをしているのですが、生徒会の腕章をつけた制服姿でキレキレのダンスを踊るという、かなり目を引く演出となっていました。個人的には、作中では描写されていませんが、同好会と同じように栞子ちゃんの変化をすぐ近くで見ていた生徒会の人たちも、彼女のステージの手助けをしたいと考えて共にステージに上がったのかな、と妄想しています。それにしても虹ヶ咲学園の生徒会はダンスが上手ですね。

 次に「TOKIMEKI Runners」、スクスタストーリー17章を踏襲した、十人で披露された楽曲です。従来のイントロの前に、静かに、しかし何か始まりを予感させるような旋律が加えられています。この楽曲では栞子ちゃんは歩夢ちゃんとセットでパフォーマンスをしている場面が目立ちます。栞子ちゃんにとって歩夢ちゃんは、スクールアイドルになるきっかけを作った一人とも言える存在だと思います。作中で栞子ちゃんは、歩夢ちゃんのひた向きに努力する姿を幾度も間近で見ていました。彼女が無駄と断じていたスクールアイドル活動を意味のあるものへ変化させ、スクールアイドルとしての一歩を踏み出させたのは、歩夢ちゃんの純粋でまっすぐな想いによるものではないかと思います。また、栞子ちゃんと歩夢ちゃんは結構似通っていたりします。両者とも「人のために全力で行動する」ことができる人で、それが「あなた(スクスタの主人公)」なのか「全ての人々」なのかという違いはありますが、彼女たちの行動基盤には常に「人のため」が存在しています。そんな二人による声を揃え、ダンスを揃えてのパフォーマンスは、見ている人全員に届かせるような想いが詰まっていて非常に感動いたしました。ちなみに個人的には間奏で栞子ちゃんがスカートを押さえる仕草をしながら首を傾げるダンスもお気に入りです。ものすごくかわいいので是非。

 次に「Love U my friends」についてですが、正直感情が昂りすぎて記憶が曖昧です。ただとにかくイントロで号泣して、栞子ちゃんがあの衣装を着ているという事実に打ち震えていたことは覚えています。

 最後に「Just Believe!!!」では栞子ちゃんのパートから曲が始まります。「広げた真っ白なページ」という歌詞はスクールアイドルアイドルを始めたての彼女にぴったりであり、正にこの瞬間から新たな物語が書き込まれていくような、そんな歌詞で非常に好きな歌い出しです。
 そして、この曲で最も印象深かった場面が落ちサビで栞子ちゃんとせつ菜ちゃんが一緒に「光の先へアクセル全開」と歌う場面です。この二人といえば生徒会長の座をかけて争い、二人の関係もあって当時の同好会からは栞子ちゃんは明確な「敵」と見られていました。しかし、せつ菜自身は栞子の実力や考えを認め、彼女のことを素直に受け入れています。その後は生徒会活動やスクールアイドル活動を通してせつ菜ちゃんと栞子ちゃんの関係も深まっていきます。元々、栞子ちゃんにはせつ菜ちゃんを生徒会長の仕事から解放するという意図もあったため、せつ菜の能力は評価していました。スクールアイドルアイドルフェスティバルではせつ菜ちゃんと共に会場の見回りをしており、そこではせつ菜ちゃんのことを「優木さん」と呼ぶ一幕が見られたりします。ちなみに、せつ菜ちゃんのストーリーでは「せつ菜さん」と呼んでいるため、正式に同好会に加入してから更に仲が深まったようです。
 また、これは栞子ちゃんの預かり知らないところですが、栞子ちゃんが生徒会長となったことでせつ菜ちゃんは自分の両親に自分の大好きを伝える機会を得ます。そこで歌われたのがせつ菜ちゃんの2ndソロ曲「MELODY」であり、栞子ちゃんはこの曲の完成に間接的に関わっていると言えます。
 そんな二人が共に歌っている場面ですが、ここで三船栞子ちゃん役の小泉萌香さんと優木せつ菜ちゃん役の楠木ともりさんは、お互いに体を寄せ合いながら満面の笑顔で歌っていました。楽しそうに、それでいて力強い歌声は、戦友とも呼べるような二人の関係性が如実に現れているところだと思います。 

 総じて、三船栞子ちゃんと小泉萌香さんは初ステージとは思えないほどに虹ヶ咲に溶け込み、十人のグループというラブライブ!の新しい形を、予想を遥かに超える感動で届けてくれました。すでにストーリーでは初めてファミレスに行ったり、噛まずに台本を読めたことに喜んだりとこれまでの栞子ちゃんとはまた違った、高校一年生らしいかわいらしさを見せてくれているので、今後の展開も非常に楽しみにしています。

2ndライブの感想文-かすみんとまゆち-

 気持ちの整理がつき始めたのでポロポロとこぼしていきます。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブのネタバレを多分に含んでおりますので注意していただくようよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 さて、9/12と9/13に虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の2ndライブがありました。二日間にわたって三つの公演を行ったこのライブは、たくさんの「初」が詰まったものとなりました。例えばシリーズ初の「有料無観客ライブ」であり、シリーズ初の「同じ学校に通う十人のスクールアイドルがパフォーマンスをするライブ」。そんな「初」だらけのライブの中で、この楽曲もまた「初」を背負ったものでした。

 「無敵級*ビリーバー」、シリーズ初の「ソロ楽曲にアニメーションPVがつけられた曲」であるのと同時に、虹ヶ咲のキャラクターたちがアニメ作画で動く初めての曲です。そして、この曲を担当しているキャラが中須かすみちゃん。虹ヶ咲における私の推しキャラであり、総選挙でソロ曲を勝ち得た際の喜びは昨日のことのように覚えています。この曲に対する私の一人語りは割愛しますが、かすみちゃんの内面に秘めた想いが随所に綴られ、「かわいさ」という彼女にとって決して譲れないものが歌にもダンスにも現れている素晴らしい楽曲です。2ndライブでは間違いなく披露されるだろうと思っており、私の楽しみの一つでもありました。

 そしていよいよ虹ヶ咲2ndのDay1昼公演。「未来ハーモニー」から始まったライブは、オンラインならではの魅せ方がなされており、画面越しでも十二分な盛り上がりを予感させるものでした。その後のメンバーの挨拶で、中須かすみ役の相良茉優さんが準備のために舞台裏へと移っていったのを見て「これは次にあの曲がくる」と早くも期待を高めて待っていると、聴き慣れたイントロとスクリーンに映し出されるPV映像。期待は興奮に変わり、全てを目に耳に心に焼き付けようと画面に集中しました。CDのジャケット絵と同じ衣装に身を包んだ相良さんがステージ上に立っているのが見えると、興奮は最高潮に達しました。

 いつもと変わらず愛嬌のある笑顔を見せながらパフォーマンスを始める相良さん。ところが、一番のサビ前で相良さんは二番のサビ前での歌詞を歌ってしまいました。歌い始めてすぐに気づかれた様子でしたが、歌詞を取り戻すことは厳しくそのままサビへと突入。この様子を見て、私は大きな心配をしてしまいました。サビ直前、曲の盛り上がりを前にしてこのミスは心に相当なダメージを負わせているはずです。もしかしたらこのまま崩れていってしまうのかもしれない、そんな不安を感じていました。

 しかし、相良さんは笑っていました。それは、とにかく笑顔を作ろうとした結果なのか、自然とそうなったのか、それは私にはわかりません。けれど、少なくとも私には、彼女の笑顔は満面の明るい弾けるような表情に思えました。その表情に安堵するとともに、相良さんの「強さ」を感じました。初めての選挙で勝ち得たソロ曲、初めてのアニメーションPV、これらが背負っていた期待や不安はそのまま相良さんへの重圧にもなっていたのではないでしょうか。さらに2ndライブのソロ曲トップバッター、私には想像もつかないほどのプレッシャーがかかっていたのだと思います。その中でも相良さんは笑顔を絶やさず、精一杯のパフォーマンスをステージ上で魅せ、見事に最後まで歌い切りました。

 その後もライブは進み、ユニット「QU4RTZ」の「Sing&Smile!!」「Beautiful Moonlight」、かすみちゃんの3rdソロ曲である「Margaret」も相良さんは歌い上げMCに入ります。そこで相良さんは「無敵級*ビリーバー」を振り返り、悔しい思いを話されていましたが、クヨクヨとした雰囲気ではなく前向きに出来事を捉えているように感じました。「やっぱりまゆち(相良茉優さんの愛称)は強い人だ」とこの時私は改めて思いました。この後のアンコールで披露されたかすみちゃんの1stソロ曲「ダイアモンド」はワンコーラスだけでしたが、これまでで最高の歌、ダンス、表情で、思わず「かすみん(中須かすみちゃんの愛称)だ……」と口から漏れていました。

 夜公演では目立ったミスもなく、昼公演よりもさらにグレードアップしたパフォーマンスとなっており、わずか数時間でこれほどの改善をされたことに驚きました。特に「無敵級*ビリーバー」では、昼公演でミスした部分を乗り越えた瞬間に画面の前でガッツポーズをしていました。

 Day2は一公演のみで、セットリストもDay1とは大幅に変更されていました。ラブライブ!フェス以来の「ダイアモンド」のフルバージョンで久々のかすみんコールができて、とても爽快感を得られました。現地に行くことは叶いませんでしたが、自宅で画面越しに応援をするというのも意外と悪くないものでした。

 楽しい時間が過ぎ去るのはあっという間で、気づけば最後の曲も終わりメンバーの挨拶となっていました。アニメの放送日や高咲侑ちゃんのキャストの公開、そして3rdライブの開催決定と多くの嬉しい情報や今回の2ndライブについて各メンバーがそれぞれの想いを訥々と語っていく中、相良さんの挨拶の順番となりました。いつも通りかすみちゃんになりきりながら笑顔で挨拶をしていく相良さん。しかし、2ndライブを振り返ったときに彼女の目から涙が溢れます。この時、私は正直驚きました。これまでのライブでは相良さんは涙をこぼすメンバーを助ける役割に回ることが多く、ご本人が涙を流すという場面を見たことがなかったからです。その涙は「かすみんに申し訳ない」という気持ちから溢れ出たものでした。

 ここで中須かすみちゃんについて少し述べさせていただきます。かすみちゃんはスクールアイドルで一番になるために他のメンバーにイタズラを仕掛けている(基本的に失敗する、成功した時は相手に好意的に受け取られてしまう)女の子です。メンバーの挨拶でも「腹黒系スクールアイドル」といじられていたりしますが、彼女は「強さ」をもった女の子でもあります。自分以外の部員がいなくなってしまった同好会をひとりで守り続け、周りの空気が落ち込んでいるときには場を明るくするために振る舞う、そんな「強さ」です。

 私は、このかすみちゃんの「強さ」は相良さんの「強さ」と繋がるのではないかと思います。ミスをしても助けを求めることのできないたったひとりのステージ上で気丈にパフォーマンスをやりきり、メンバーの挨拶ではしんみりとした空気を吹き飛ばす、これは相良さんのもつ「強さ」であり、かすみちゃんのもつ「強さ」と似ているのではないかと思います。これは相良さんが元々もっていたものかもしれませんが、私は相良さんがかすみちゃんに近づこうとする努力の賜物だと感じています。ラブライブ!シリーズは二次元と三次元の融合を強く前に押し出しています。その中にはキャラクターとキャストも含まれていて、虹ヶ咲のメンバーの中でも相良さんは特にこのことを心に留めていらっしゃるように感じています。以前、虹ヶ咲のラジオパーソナリティを決める企画があったときに、他のメンバーがキャストとしてコメントを出している中、相良さんはかすみちゃんの声でかすみちゃんとしてのコメントをしていたことを今でも鮮明に覚えております。もちろん、キャストとしてのコメントをすることが悪いことではなく、むしろ自然なことだと思います。しかし、私は相良さんのその姿に、少しでもかすみちゃんに近づこうとする姿勢に、相良茉優さんが中須かすみちゃん役で本当に良かったと感じました。

 相良さんが涙を流す中、桜坂しずくちゃん役の前田佳織里さんが「まゆちだからかすみんを表現できる」と励ましてらっしゃいましたが、これは本当にその通りだと思います。相良さんのかすみちゃんに対する真摯な姿勢は他のメンバーにも伝わっていて、周りがただ励ますのではなくあえて「かすかす」と呼び続けていたのは、そうすればきっと相良さんが「かすみんです!」と返してくれると信じていたからなのでしょう。この時、相良さんはまだ涙が止まらず、「かすみんだけど……」と返すにとどまっていましたが、Day1のMCで見せた前向きな態度も、もしかしたら「かすみちゃんは失敗してもステージ上で泣いたりしない」という思いで必死に涙を押さえ込んだものだったのかもしれません。しかし、2ndライブの終わりを目前にしてライブを振り返ったときに「中須かすみ役の相良茉優」としての想いが溢れ出て、あの涙はその思いの結晶だったように感じます。

 二次元のキャラクターと三次元の人間が完全な同一人物となることは不可能です。しかし、それでもあの瞬間にステージ上で輝いていた相良茉優さんは、紛れもなく中須かすみちゃんだった、私はそう思います。今回の2ndライブを経て、ますます中須かすみちゃんを、相良茉優さんを応援していきたいと強く感じました。