アニメ虹ヶ咲の感想文 13話

 「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」のアニメ13話を視聴しました。最終回ということで各メンバーの軌跡を振り返るようなライブ演出がなされており、これまでの出来事が蘇ってくると同時に終わりへと近づく淋しさを感じました。

 どのメンバーのステージも個性が盛り込まれて、ファンと一体となるパフォーマンスを行なっています。このようなファンとの距離感は、ソロ活動を主とする同好会だからこそだったのだと思いました。グループだとメンバーごとに視線が移ったり、歌い分けがあったりと全体のバランスによってどこを注視するのか変わりますが、ソロであればメンバーとファンとが一対一でいられる空間となるので自然と距離感も縮まるのかもしれません。

 時間は進み、雨が降り出した場面。ここで虹ヶ咲という作品の大きな特徴が表れていたように感じます。
 これまでの作品、μ'sであれば穂乃果ちゃんが、Aqoursであれば千歌ちゃんのような人物がいれば、雨雲を吹き飛ばすことができたかもしれません。しかし、虹ヶ咲にはそういった「圧倒的な主人公」は存在しません。これは決して悪いことではなく、むしろ虹ヶ咲の面々は「皆が等しく主人公」なのだと思っています。
 それぞれがそれぞれにしかできない方法でそれぞれの夢に突き進んでいく姿はまさに主人公で、それぞれが自分だけの世界を持っています。だからこそ、彼女たちは人々を惹きつける魅力を出せるのだと思います。
 そうした主人公たちが集まった場で、誰かが天気を強引に変えてしまうような強烈な力を発揮するのは、メンバー間に優劣をつけてしまうように感じます。ここでは雨雲が過ぎ去るのを待ち、それぞれの世界へと走り出していく方が虹ヶ咲らしいと私は思いました。雨が止まずイベントを中止せざるをえなくなったり、ファンが帰ってしまったりしなかったのも、それぞれが主人公だったからに他ならないでしょう。ソロ活動を行なっている人々の中で特別に「個」が際立つことがないのは、虹ヶ咲というグループにおいて非常に重要なことではないでしょうか。

 スクールアイドルフェスティバルの最後には、参加したスクールアイドル全員が登壇したライブが行われました。そこで歩夢ちゃんは「あなたが私を支えてくれたように、あなたには私がいる」と言います。これは侑ちゃん個人に向けたものでもあるのですが、これまでの感謝を伝えるということ以上に、新しいことへの挑戦に不安を感じている侑ちゃんへのエールなのでしょう。そして、同好会のメンバー9人が歌う『夢がここからはじまるよ』とスクールアイドルフェスティバルの成功によって、侑ちゃんは自信と安心をもって自分の夢へと進む勇気を抱くことができたのだと思います。

 最後の侑ちゃんの独白「何事も全部うまくいくなんてことはあるわけなくて、実際は後悔しちゃうことばかりなんだと思う。でも!」から、ピアノに向かいそのままエンディングという流れでこの物語は一旦幕を閉じます。「でも!」の後に何が続くのか。私は『NEO SKY, NEO MAP!』のサビ部分が続くように思います。行く先に何が待ち受けているかは分からないけれど、歩夢ちゃんをはじめとした仲間たちと一緒ならきっと笑い合って進んでいける。スクールアイドルから夢をもらい、勇気をもらった侑ちゃんが夢へと踏み出していく状況にピッタリの歌詞なのではないでしょうか。

 ステージ上ではひとりだからこそ、人との繋がりを強く感じる。そして、人との繋がりを通じて自分だけでは進むことのできなかった前へと進むことができる。これはソロ活動を主題とするからこそ描けるもので、侑ちゃんという「人と人を繋ぐ人物」がいたからこそ辿り着けたものだったと思います。夢を追いかけているスクールアイドルを間近で見続けていたからこそ、夢を追いかけることの大変さや苦労も知っている侑ちゃんが、それでも勇気を持って夢へと進むという場面で話が終わる。侑ちゃんの中で「何かが変わる」ことで生じたのは「夢」だけではなく、「夢へと進む勇気」でもあったことが感じられる終わり方だったのではないでしょうか。

 スクスタの虹ヶ咲とはまた違った虹ヶ咲を見ることができたアニメでした。アニメを見て虹ヶ咲の魅力に引き込まれた人には、是非スクスタのストーリーも味わってほしいと思います。二期があるかはわかりませんが、もしもあるならその時を楽しみに待っていたいと思います。